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ことなし、己（おのれ）を制（せい）せるものは、自制（じせい）によりて、〔其（そ）の處（ところ）に〕達（たつ）すること、猶（な）ほ馴（な）れたるに〔騎（の）りて行（ゆ）くが如（ごと）し〕。

³²⁴ 護穀（ダナパーラガ）と名（なづ）くる象（ざう）の、烈（はげ）しく狂（くる）ひて、禁制（きんせい）し難（がた）きも、縛（ばく）せられては食（じき）を食（くら）ふことなし、象（ざう）は象（ざう）〔の棲（す）む〕林（はやし）を愛慕（あいぼ）す。

³²⁵ 懶惰（らいだ）にして飽食（はうしよく）長眠（ちやうみん）、轉輾（てんでん）して臥（ぐわ）する愚者（ぐしや）は、供食（くじき）を以（もつ）て飼（か）はるる大豕（だいし）の如（ごと）く、數數（しばしば）胞胎（はうたい）に入（い）る。

^{326 (3)}此（こ）の心（こころ）曾（かつ）て、望（のぞみ）により、欲（よく）に隨（したが）ひ、樂（らく）に任（まか）せて流轉（るてん）したり、我（われ）今日（こんにち）能（よ）く之（これ）を制（せい）すること、象師（ざうし）の猛象（みやうざう）を〔制（せい）する〕が如（ごと）くせん。

³²⁷ 精勤（しやうごん）を樂（らく）とせよ、己（おのれ）の心（こころ）を防護（ばうご）せよ、難處（なんしよ）より身（み）を拔（ね）くこと、泥中（でいちう）に陷（おちゐ）れる象（ざう）の如（ごと）くせよ。

³²⁸ 若（も）し思慮（しりよ）ある、善行（ぜんぎやう）の賢者（けんしや）を、同行（どうぎやう）の友（とも）に得（え）ば、一切（さい）の危難（きなん）に克（か）ち、歡喜（くわんぎ）思惟（しゆゐ）して、彼（かれ）と共（とも）に行（おこな）へ。

³²⁹ 若（も）し思慮（しりよ）ある、善行（ぜんぎやう）の賢者（けんしや）を、同行（どうぎやう）の友（とも）に得（え）ずば、王（わう）の克（か）ち取（と）りたる國（くに）を棄（す）つるが如（ごと）く、摩登伽（マータンガ）林（りん）中（ちう）の象（ざう）の如（ごと）く、唯（ただ）獨（ひと）り行（おこな）へ。

³³⁰ 獨（ひと）り棲（す）むこそ好（よ）けれ、愚者（ぐしや）と伴（とも）たるはなし、獨（ひと）り行（おこな）うて惡事（あくじ）を作（な）す勿（なか）れ、寡欲（くわよく）なること摩登伽（マータンガ）林（りん）中（ちう）の象（ざう）の如（ごと）くなれ。

³³¹ 事（こと）起（おこ）れば友（とも）樂（らく）を得（え）、滿足（まんぞく）は何處（いづこ）より來（きた）るも樂（たの）し、命終（みやうじゆう）にも善行（ぜんぎやう）は樂（たの）しく、一切（さい）の苦（く）を棄（す）つるは樂（たの）し。

³³² 世（よ）に母（はは）たるは樂（たの）しく、世（よ）に父（ちち）たるは樂（たの）し、世（よ）に沙門（しやもん）たるは樂（たの）しく、世（よ）に婆羅門（ばらもん）たるは樂（たの）し。

³³³ 老後（らうご）に到（いた）るまで、戒（かい）を持（たも）つは樂（らく）、正信（しやうしん）を樹（た）つるは樂（らく）、智慧（ちゑ）を得（う）るは樂（たの）しく、惡（あく）を作（な）さざるは樂（たの）し。

(1) 辛頭・信度・仙陀婆・印度河の流域地方にして名馬を產す。 (2) 不至の地とは涅槃の境を云ふ。 (3) 長老偈七七、一一三〇

愛欲品（あいよくほん）第（だい）二十四