153 154
(1)屋舍の工人を求めて、之を看出さず、多生輪廻界を奔馳して、轉た苦の生死を經たり。
屋工、汝今看出さる、再び家を構ふることあらじ、汝の桷材は總て破られ、棟梁は毀たる、滅に至れる心は諸愛の滅盡に達せり。
155
壯時、梵行を修せず、財寶を得ずして、魚の棲まざる池の中なる老鴻の如くに亡ぶ。
156
壯時、梵行を修せず、財寶を得ずして、朽ちたる弓の如く、過去を託ちて臥せり。
(1) 渴愛を指す、是れ渴愛は生死輪廻の因なるが故なり、此の一五三、一五四の兩偈は佛大覺の後、初めて唱へられしものなりと傅ふ。
自己品第十二
157
己を愛すべしと知らば、善く之を保護せよ、〔人生〕三期の一に於て、賢者は宜しく醒悟すべきなり。
158
己を先づ正しき位に立て、而して他を敎へなば、賢者は勞する所あらじ。
159
己を處すること、他を敎ふるが如くならば、能く己を制して、他を制するを得ん、そは己は制し難きが故なり。
160
己こそ己の依所なれ、他何物か依所たるあらん、能く己を制する時は、得難き依所を得べし。
161
自ら作りたる罪業は、己に生じ、己に出たるもの、其が愚人を損ふこと、金剛石の摩尼を〔鑽る〕が如し。
162
汙戒甚しき人は其の身を處して、敵者の望むが如くすること、蔓草の其の覆へる樹に於けるが如し。
163
不善にして、己に不利なる事は爲し易く、事の利ありて善なる、之は極めて爲し難し。
164
應供者・聖者・道によりて活くる人の敎を、邪惡の見