貪と瞋と又癡とを棄て、正智あり、心よく解脫せるものは、此の世彼の世に著なくして、(11)沙門道に達すべし。
(1) 原語には「古」の意もあり、法句經註解書には「古の法、總ゆる佛、辟支佛、漏盡の聲聞の踏みたる道」と釋せり。 (2) Yamāmase 閻魔王の爲に服せらる、死に近く、死に行く、消え果つ等の意もあり、 (3) 原典にては「他」の字を用ひ、「智者を除きて他のもの」と釋す。 (4) 見聞し知覺する物體に對して莊美なり淸淨なり愛すべきものなり等の觀念を抱くを云ふ。 (5) 眼耳鼻舌身意の六根を制せず、此等諸根の門戶を護らざるを言ふ。 (6) 漏とは煩惱の謂なり。 (7) 「精」とは「精髓、中樞、要部」等の義なり、「非精」とは之に反して、緊要ならざる部分なり。 (8) 「邪思惟」又は「正思惟」を其の分別の「境界」、範圍とするの意なり。 (9) 原語には、有義、有利等の義あり、佛の說かれたる敎を言ふ。 (10) 「沙門道の分得者にあらず、」 (11) 涅槃に達するを言ふ。
精勤品第二
21
精勤は不死の道にして、放逸は死の道なり、精勤の人は死することなく、放逸の人は猶ほ死せるが如し。
22
賢者は精勤に於て能く此〔の理〕を覺り、聖者の道を樂み精勤を悦ぶ。
23
禪思あり、忍耐あり、常に勇健なる賢者は無上の安隱・涅槃を獲取す。
24
向上あり、憶念あり、業淨く、〔事を〕なすに心を用ひ、自ら制し、道によりて生き、精勤するもの、〔斯の如き人の〕譽は增長す。
25
向上と精勤と自制と調伏とを以て、智者は(1)暴流の侵すことなき洲を作らんことを。
26
愚にして智なき輩は放逸に耽り、智ある人は精勤を護ること、最上の珍寶の如くす。
27
放逸に耽ることなかれ、欲樂の愛著に〔耽ること〕なかれ、これ精勤にして禪思あるものは大安樂を得べければなり。