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(1) 不言說の法とは言詮不及の法の意にて、涅槃を指す。

忿怒品（ふんぬほん）第（だい）十七

²²¹ 忿（ふん）を棄（す）て、慢（まん）を離（はな）れ、諸（もろもろ）の纏結（てんけつ）を超（こ）えよ、斯（か）く名色（みやうしき）に執（しふ）せず、我有（がう）なき人（ひと）には苦（く）來（きた）ることなし。

²²² 發（おこ）れる忿怒（ふんぬ）を制（せい）すること、轉（ころが）る車（くるま）を制（せい）するが如（ごと）くするもの、此（こ）の人（ひと）をぞ我（われ）は調御者（でうごしや）と云（い）ふ、他（た）は唯（ただ）手網（たづな）を執（と）るものなり。

²²³ 怒（いかり）は愛（あい）を以（もつ）て克（か）ち、不善（ふぜん）は善（ぜん）を以（もつ）て克（か）つべし、吝嗇（りんしよく）の徒（と）には仁惠（じんけい）を以（もつ）て、虛言（きよごん）の人（ひと）には、實語（じつご）を以（もつ）て克（か）つべし。

²²⁴ 實（じつ）を語れ、怒（いか）る勿（なか）れ、些（すこし）にても求（もと）められなば與（あた）へよ、此（こ）の三事（じ）によりて諸天（しよてん）の所（ところ）に到（いた）れ。

²²⁵ 害意（がいい）なき牟尼（むに）は常（つね）に身（み）を攝（せつ）して、⁽¹⁾不死（ふし）の所（ところ）に到（いた）る。彼處（かしこ）に到（いた）りては憂（うれ）ふることなし。

²²⁶ 常（つね）に覺窹（かくご）し、晝夜（ちうや）に勤學（きんがく）し、涅槃（ねはん）を得（え）んと努（つと）むるものの煩惱（ぼんなう）は滅（ほろ）びん。

^{227 (2)}阿偷羅（アツラ）、之（こ）は古（ふる）くして、今（いま）出來（いできた）れるものに等（ひと）しからず、曰（いは）く「人（ひと）は默（もく）して坐（ざ）せるものを謗（そし）り、多（おほ）く語（かた）るものを謗（そし）り、少（すくな）く言（い）ふものをも亦（また）謗（そし）る、世（よ）に謗（そしり）を受（う）けざるものなし。

²²⁸ 常（つね）に唯（ただ）謗（そし）られ、常（つね）に唯（ただ）讚（ほ）めらるるもの、過去（くわこ）にあらざりき、未來（みらい）になけん、而（しか）して今（いま）もあらず。

^{229 230} 多智（たち）の人（ひと）若（も）し、行（おこなひ）失（しつ）なく、賢（けん）にして、智德（ちとく）〔具（そな）はり〕、定意（ぢやうい）あるものを、日日（にちにち）絕（た）えず稱揚（しようやう）することあらば、閻浮提金（えんぶだごん）の貨幣（くわへい）の如（ごと）く、誰（たれ）か此（こ）の人（ひと）を謗（そし）り得（え）んや、諸天（しよてん）も之（これ）を讃（ほ）め、梵天（ぼんてん）も之（これ）を讃（ほ）めん。」