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  絕えねども  いかなるつみか  おもるらむ  ゆきもはなれず

  かくてのみ  ひとのうき瀨に  たゞよひて  つらきこゝろは

  水のあわの  消えば消えなむと  おもへども  かなしきことは

  みちのくの  つゞじのをかの  くまつゞじ  くるほどをだに

  またでやは  はする〈三字中イ〉を絕ゆべき  あふくまの あひ見てだにと

  おもひつゝ  なげくなみだの  ころも手に  かゝらぬ世にも

  經べき身を  なぞやと思へど  あふばかり  かけはなれては

  しかすがに  こひしかるべき  からごろも  うち着てひとの

  うらもなく  なれしこゝろを  おもひては  うき世をされる

  かひもなし  おもひ出でなき  われ〈別イ〉やせむ  と思ひかく思ひ

  おもふまに  やまとつもれる  しきたへの  まくらのちりも

  ひとりねの  かずにしとらは  つきぬべし  なにか絕えぬる

  たびなりと  おもふものから  かぜ吹きて  ひと日も見えじ

  あまぐもは  かへりしときの  なぐさめに  今こむといひし

  ことの葉を  さもやとまつの  みどりごの  たえずまねぶも

  聞くごとに  ひとわろくなる  なみだのみ  わが身をうみと

  たゝえても  みるめもよせぬ  みその浦は  かひもあらじと