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て折しもなどてさはたありけむ、いとをかし。
したりがほなるもの
正月一日のつとめてさいそにはなひたる人。きしろふたびの藏人にかなしうする子なしたる人のけしき。ぢもくにその年の一の國得たる人のよろこびなどいひて、「いとかしこうなり給へり」など人のいふいらへに、「何かいとことやうにほろびて侍るなれば」などいふもしたり顏なり。又人多く挑みたる中にえられて聟に取られたるも我はと思ひぬべし。こはきものゝけてうじたる驗しや。ゐふたぎのあけとうしたる。小弓射るに片つ方の人しはぶきをし紛らはして騷ぐに、念じて音高う射てあてたるこそしたり顏なるけしきなれ。碁をうつにさばかりと知らでふくつけさは、また異所にかゝぐりありくに、こと方より目もなくして多くひろひ取りたるも嬉しからじや。ほこりかに打ち笑ひ、たゞの勝よりはほこりかなり。ありありてずりやうになりたる人の氣色こそうれしげなれ。僅にあるずんざのなめげにあなづるも妬しと思ひ聞えながら、いかゞせむとて念じ過しつるに、我にもまさるものどもの、かしこまり「唯おほせ承らむ」と追しようする樣は、ありし人とやは見えたる。女房うちつかひ見えざりし調度さうぞくのわきいづる。ず領したる人の中將になりたるこそもと君達のなりあがりたるよりもけ高うしたり顏にいみじう思ひためれ。位こそ猶めでたきものにはあれ。おなじ人ながら大夫の君や侍從の君など聞ゆるをりは、いとあなづりやすきものを、中納言、大納言、大臣などになりぬるはむげにせむかたなく、やんごとなく覺え給ふ事のこよ