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らぬきたるやうなるこそいみじうあはれにをかしけれ。すこし日たけぬれば、萩などのいとおもげなりつるに〈一字イ無〉露の落つるに枝のうち動きて人も手ふれぬに、ふとかみざまへあがりたるいみじういとをかしといひたる、こと人の心ちにはつゆをかしからじと思ふこそ又をかしけれ。七日の若菜を人の六日にもてさわぎとりちらしなどするに、見も知らぬ草を子どものもてきたるを「何とかこれをばいふ」といへど、とみにもいはず、「いざ」などこれかれ見合せて「耳な草となむいふ」といふものゝあれば、「うべなりけり、聞かぬかほなるは」など笑ふに、又をかしげなる菊の生ひたるをもてきたれば、

 「つめどなほみゝな草こそつれなけれあまたしあれば菊もまじれり」

といはまほしけれど聞き入るべくもあらず。

二月くわんのつかさにかうぢやうといふことするは、何事にあらむ。しやくでんもいかならむ。くじなどはかけ奉りてすることなるべし。そうめいとてうへにも宮にもあやしき物などかはらけに盛りてまゐらする。「頭辨〈行成〉の御もとより」とてとのもづかさ、繪などやうなる物を白きしきしに包みて、梅の花のいみじく咲きたるにつけてもてきたる繪にやあらむと急ぎ取り入れて見れば、へいだんといふ物を二つならべて包みたるなりけり。添へたるたて文に花文のやうに書きて「進上、へいだん一つゝみ、例によりて進上如件、少納言殿に」とて月日かきて「みまなのなりゆき」とて奧に「このをのこはみづから參らむとするを、晝はかたちわろしとて參らぬなり」といみじくをかしげに書き給ひたり。御前に參りて御覽ぜさすれば