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「花はなほうき世もわかずさきてけりみやこも今やさかりなるらむ。
あと見ゆるみちのしをりのさくら花この山びとのなさけをぞしる」。
十二日にかこ川の宿といふ所におはします程に、妙法院宮讃岐へわたらせ給ふとて、同じ道少しちがひたれど、この川のひんがし野ぐちといふ所まで參り給へるよし奏せさせ給へば、いと哀にあひ見まほしうおぼさるれど、御送のつはものども許し聞えねば、宮空しく歸らせ給ふ御心のうち堪へがたく亂れまさるべし。さらなる事なれど、かばかりの事だに御心にまかせずなりぬる世の中、いへばえにつらくうらめしからぬ人なし。十七日美作の國におはしましつきぬ。御心ちなやましくてこの國に二三日やすらはせ給ふほど、かりそめの御やどりなれば物深からでさぶらふかぎりのものゝふども、おのづからけぢかく見奉るをあはれにめでたしと思ひ聞ゆ。君もおぼし續くる事ありて、
「あはれとはなれも見るらむ我が民を思ふこゝろはいまもかはらず」。
おはしますに續きたる軒のつまより煙の立ちくれば、「いほりにたける」とうち誦ぜさせ給へるもえんなり。
「よそにのみ思ひぞやりしおもひきや民のかまどをかくや見むとは」。
廿一日雲淸寺といふ所にて、いとおもしろき花を折りて忠顯少將そうしける。
「色も香もかはらぬしもぞうかりけるみやこのほかの花のこずゑは」。
又小山の五郞とかやいふ武士におなじ花をやるとて、少將、