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外記もろみつなど寢殿の南おもての庭に立ちて孝經の天子の章をぞよむ。その上達部簀子にさぶらひ給ふ。あしたの御湯はてゝ皆まかでゝ後、又夕の御湯殿の儀式さきのまゝにてはてぬる後、寢殿の南東の間に白き袖口どもおしいださる。しろゑの五尺の屛風たて渡して、上達部よりすゑきて、饗どもすゑわたす。公卿の座に人々二行につきあまるほどなり。右大將〈さねもと〉、大夫〈きんすけ〉、公基、實雄、以上大納言。中納言に左衞門督〈あきちか〉、權大夫〈さねふぢ〉、公持、侍從宰相〈すけすゑ〉、別當〈きんみつ〉、左代辨宰相〈つねみつ〉、新宰相〈さだつぐ〉、右兵衞督〈ありすけ〉、新宰相中將〈みちゆき〉などつきたり。その座の末に紫べりのたゝみに殿上人中將實直朝臣をはじめて數しらずまゐれり。御前のものども殿上の四位はこぶ。ちご御子の御ぞの案二脚はしかくしの間にかきたつ。御かはらけ二めぐりの後、大夫〈きんすけ〉らうえい「嘉辰令月」とのたまへば、有資聲くはへらる。又「昭王」とおし重ねていださる。御聲々しう德にあらまほしうめでたし。かやうにて明けぬ。十四日に五夜の儀式さきの如し。今宵は御遊あり、實基の大將殿〈德大寺〉拍子とり給ふ。笙宗基、笛二位中納言〈よしのり〉、篳篥兼敎朝臣、琵琶大夫〈きんすけ〉、箏のこと權の大夫〈さねふぢ〉、和琴〈ありけす〉、末の拍子もおなじ人なりしにや。安名尊、鳥破、席田、伊勢海、萬歲樂、三臺急例の事なり。かずかずめでたし。十六日七夜の御うぶ養、內よりの御沙汰なれば今すこし儀式ことにていかめし。關白殿、右のおとゞ右大將〈ともざね〉、大納言定雅、公相、公基、實雄。中納言には例の人々、顯親、實藤、公持、資季、公光、經光、定嗣、三位中將〈みちなり〉、殿上人頭中將〈もろつぐ〉より始めて殘るはすくなし。勅使藏人侍從宗基、目錄もちてまゐれり。大夫對面し給ひて白き御ぞかづけ給ふ。大〈本イ〉宮のものどもにもうち