奉つるな」と指にて使者の尻をつめつて 留「如何で御座り奉つるな 次武「御親切に御つめり下さるかは知らんが、一向に通じませんな 留「何うだイ、是では 次武「恰で蠅がとまり居る樣で御座る 留「何んだツて蠅がとまり居る樣で奉つるか、よし今度は一件だぞ」と懷中から釘拔を取り出し 留「オイ此方を御向き奉つては困り奉つるヨ、ソラ何うで御座り奉つるな」と釘拔にて尻をつめると 次武「是は早や餘程堪へますわイ 留「何んだ餘程堪へ奉つると來たナ、夫れ思ひ出し奉れ 次武「是は堪へ難のふ御座り奉つる 留「奉つると來たな、ヤレ、ヱンヤラヤアー 次武「オー痛々………留「ウントコラアー 次武「オーイタヽヽヽ 留「ヨイトコラアー 次武「オーイタヽヽヽ 留「ヤレ閻魔のこイ 次武「思ひ出して御座る、思ひ出して御座る」田中三太夫間の唐紙を排て 三「してお使者の御口上はナ 次武「ハイ、屋敷を出る折聞ずに參りました。