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相面百稽滑

御座ござらふナ 「イヱ御使者おしゝや口上こうじやう次武ほどつひ失念しつねんいたした 益々ますおどろきりました、小身者せうしんものでは御座ござりますが、中村留太夫なかむらとめだいふまをもの、アレにひかりますが、如何いかゞいたしませうや 次武千萬せんばんかたじけないことで、何分なにぶんよろしく御願おねがたてまつること委細ゐさい承知しようちいたした、御次おつぎひかへし中村留太夫なかむらとめだいふ早々さうこれへ、中村留太夫なかむらとめだいふ留太夫とめだいふびましたが 留公とめこうから無官むくわんうだイおれ服裝なりは、黑紋付くろもんつき袴穿はかまはきわれながらをとこが十だんもあがりやアがつた、一ばん服裝なり町內ちやうない步行あるひてイものだ、んてやアがるだらふ、アラとめさん一寸ちよいと御覽ごらんなさいヨ、眞實ほんとう立派りつぱことだ、アーひとを一ぺん亭主ていしゆにしてたいは、とるに相違さうゐない、有難ありがた御次おつぎひかへし留太夫とめだいふ、コレ 「オイ 「コレ留太夫殿とめだいふどのこれ」とはれて留公とめこう 眞平まつぴら御免ごめんなせエ、 「コレ失禮しつれいがあつてはならん、叮嚀ていねいいたよろしう御座ござたてまつる 只今たゞいま申上ゝをしあげました中村留太夫なかむらとめだいふ御座ござりまする 次武これはじめて御面會ごめんくわいつかまつる、手前事てまへこと松平正目まつだひらまさめしやう家來けらいじぶ田次武右衛門たじぶゑもんまをし、いたつて不骨者ぶこつもの御見知おみしおかれて御別ごべつ