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相面百稽滑

ると、留兄とめあにんてひますぜ 「シテ名字みやうじんとふな んだイ、名字みやうじなんて こまるなア、中村なかむらとかまた田中ゝなかとかんとか名字みやうじがあるだらう れがネ、名字みやうじたし大工でえく馬鹿ばか大工でえく名字みやうじがあるか、れではよろしい、中村氏なかむらうぢ御名前おなまへ拜借はいしやくして中村留太夫なかむらとめだいふになれ れではわつち留太夫とめだいふでおまへさんが三太夫だいふまる伊勢いせのおしが二人ふたり出來上できあがつた 拙者せつしや只今たゞいま彼方あちらまゐり、其方そのはうつぎひかへてれ、かなら失禮しつれいがあつてはならんぞ 「ヘイよろしふ御座ございます」とこれから三太夫だいふさん、使者しゝやまゐりますると、使者しゝやたゞ茫然ぼんやりしてります 御免ごめん如何いかゞ御座ござるな、すこしはおもしになりましたかナ 次武「ハイ、これ拙者事せつしやこと松平正目まつだひらまさめしやう家來けらいじぶ田次武右衛門たじぶゑもんまをもの以後いご御見知おみしおかれまして御別懇ごべつこんねがはしうぞんじます、テハアー これおどろきました、拙者せつしや最前さいぜんより度々たび御目通おめどほりをいたしたる田中たなか太夫だいふでお見忘みわすれはおそります 次武「ヤアこれんとも失禮しつれい御見忘おみわすまをした 如何いかゞ御座ござるナ、おもしになりましたかナ 次武んで