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相面百稽滑

まして 「ヘイ御免ごめんねヱ 「コラ其方そのはう職人體しよくにんていだがくちちがやアせんか、此處こゝ御中おなかくちだぞ 「ヘイ、ちがやアしません、一寸ちよいと田中たなか旦那だんなよん御吳おくんなさいまし 田中樣たなかさまを、オー只今たゞいま恰當てうどこれ御出おいでになつた 「ヤア田中たなか旦那だんな只今たゞいま御骨折おほねをりでアノけつ餘程よつぽどかたいかな これしからんやつじや、さて其方そのはう御使者おしゝや立寄たちよつたナ 「イヱ旦那だんなじつみんながにげましたが、わつちばかげそくなつてな、きくともなしにきました、まことどくさむらひだ、わつち孩兒がきときからゆびさき馬鹿ばかちからがあるのですから、わつちに一ばんけつをつめらしておくんなさいましな 馬鹿ばかへ、當家たうけ武士ぶしちからのあるものがないとつて、職人しよくにんたのんでつめらしたなど他人ひときかれると御當家ごたうけ外聞ぐわいぶんになる、左樣さやうこといか「そんなことはずにつめらして御吳おくんなせヱ、うそだとおもふならいままへさんのけつをつめつてやう 「コレなにいたす、しからんやつだ、しか一寸ちよつと此方こちらあがれ、少々せう相談さうだんいたすから かしこまりました、乄々しめ」と一とあがこんまゐりました、田中たなかさんは同役どうやく種々いろ御相談ごさうだんをなされて、れでは一ツもの