つめりますとか、夫れは何よりも安い事、御遠慮なく衣類を御まくり下さい、御つめり申しませう 次武「夫は千萬忝い、何分宜しく、甚だ失禮」と尻をまくる 三「サアつめりました、如何で御座らうな 次武「おつめり下さるか存ぜぬが一向に通じませんな 三「なか〳〵堅い御尻で御座いますな、是では如何で御座るな 次武「御つめり下さるか存ぜんが、恰で蠅のとまり居る樣で御座る 三「ムヽ是でも通じませんかな 次武「如何で御座らふ、御當家に指の先に力のある御家來がありませうならば、御撰み出しを願ひたいもので、左なくば此處を拜借して切腹致し度、此儀御許しを願ひまする 三「イヤ决して御短慮なされてはなりませんぞ、短慮功を爲さずと申す事も御座れば、只今同役共と相談の仕り、早速指の先に力のある者を是へ連れ參りますれば少しお控へ下されたい 次武「何分宜しく願ひ奉つる 三「委細承知仕る」と直に次の室へ退り、種々相談致して居りました、御話は變りまして、最前御使者の參りまする時、使者の室の此方に大工が仕事をして居りましたが、御使者と云ふ