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相面百稽滑

わすれたで御座ござる、切腹せつぷくいたすはやすことでは御座ござるが、それがし武士ぶしのはしくれ、イザ戰塲せんぢやうおい殿との御馬前ごばぜんにて討死うちじにいたすはのぞところなれど、使者しゝや口上こうじやうぶちわすれて切腹せつぷくいたすは殘念ざんねん至極しごく御座ござりまする」ハラなみだをこぼしました それ近頃ちかごろ御氣おきどく千萬せんばんにとかして御思おゝもしになる御工夫ごくふう御座こざりますまいか 次武「ハイ、御親切ごしんせつなる御心添おこゝろぞ有難ありがた仕合しあはせぞんずる 貴公きこうには最前さいぜんよりしきりにいしきをつめりになるやうであるが、れはんのため御座ござるな 次武「ハイ、御見出おみだしにあづか面目めんぼくなき次第しだいであるが、まア一ととほ御聞おきください、拙者せつしや幼少えうせうをり學問等がくもんとういたときに、物忘ものわすれをいたす、スルと兩親りやうしん手前てまへのこのしりをつめりれますると、いた心得こゝろえおもしたこと御座ござるテ、れがいまおい習慣ならはし相成あひなりまして、物忘ものわすれをいたたびしりをつめりますると、いた心得こゝろえおもして御座ござる、武士ぶし相身互あひみたがはなは御無禮ごぶれいでは御座ござるが、手前てまへしり一寸ちよつとつめりくださらんか んとあふせらるゝ、貴公きこう御幼少ごえうせうをり物忘ものわすれをいたされると、御兩親ごりやうしん貴殿きでんしり