附けました、そんな事は少しも知らない、じぶ田次武衛門御玄關へ出て來て、モー直に馬丁と辨當と間違て 次武「コリやア辨當は居らんか、辨當〳〵と呼びますると馬丁は 馬「若し旦那辨當ではありますまゐ、馬丁ではありませんか 次武「如何にもベツ當であつた」と笑ふ 次武「拙者丸の內へ使者に參る、供の者は 馬「ヘイお供揃ひは出來て居ります 次武「左樣か、馬を是へふつぱつて參れ 馬「馬は最前から居ります 次武「コラ斯樣に小さい馬では乘れんではないか 馬丁「旦那馬鹿ア云つちやア叶ません、夫れは犬で 次武「成程馬は此處に居つたか」と馬に乘ましたが、是も反對に乘つて 次武「コリヤ馬丁此馬には頭がないぞ 馬丁「冗談云つちやア叶ません、首は後ろにありますヨ 次武「成程、氣の毒だが、其頭を取つて此方へつけて吳れ、馬丁「そんな事は出來ません 次武「此の馬は不自由だナ 馬丁「何處の馬だツて同じです 次武「夫では拙者が尻を持あげるから馬を廻せ 馬丁「馬鹿を云つては叶ません」とやう〳〵と馬を乘りかへてシト〳〵と遣つて參りましたのが、丸の內赤井御門守