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余は昭和九年の秋、大久保侯爵から鹿兒島縣史編纂の話を承り、次いで時の知事市村慶三氏から相談を享けて縣史編纂の計畫を囑せられたのであるが、地方史と言ふものは、多くの例から見て、或は地誌に止まり、或は單に沿革史と言ふ程度になり易いものである。 國史の大本を離れず、その土地に則して環境と人文との關係を明確に把握して一貫した叙述をなすことは容易でない。 まして史料の蒐集按配等の關係からも年限を期して完成することには更に困難を伴ふものである。 鹿兒島縣は我が國史全體の上から見ても、更に地方史的に取り扱つても、寔に他の地方に比して特異な上に、また最も研究を要するちほうである。 仍て大久保侯爵に諮つて、自ら監修を御引受け