が第一におったまげたのは、その紳士がね、家の玄関の前に立つと、部の厚い、コンクリートの
万助は、その音もなくスーッと開いた扉から、家の中に招き入れられた。家は、中々宏壮なものだったが、ガランとして他には誰もいないようだった。彼はやがて、部屋の入口らしい所に来た。すると、入口の扉は、又、音もなくスーッと開いた。部屋は四方真白な壁に囲まれて、まるで牢屋のようだった。
「あっしはしまったと思いましたね。こいつは、
万助はその時の事を、追想するように、首を縮めて、さも恐ろしそうに、ブルブル顫えながら、
「あっしは、てっきり、紳士は気が違ったのだと思いました。すると、どうでしょう。紳士が、開け! 悪魔! と叫んだ拍子に、真白な壁がグラグラと動き出したのです。そうして、パクリと大きな口を開けました。紳士は
その次の間と云うのが、実に素晴らしかったそうである。壁と云わず柱と云わず、
「ここを覗いて見給え」
紳士が壁間に
「鏡に写ったのは、あっしの顔でなくて、角の生えた、恐ろしい鬼の顔なんです」
万助が
「この部屋の番人の悪魔だ。その鏡の中に住んでいるのだよ」
それから紳士は、万助を部屋の隅の壁に嵌め込みになっている、立派な戸棚の傍に連れて行って、
「開け! 悪魔! と呼んでごらん」
と云うので、万助はその通りにすると、戸棚の
「ダイヤモンドだよ。アハハハハ」
紳士は機嫌よく笑って、別の戸棚から、
「その味ったら、実に、
そんな事で、万助がまるで狐につままれたように、キョトキョトしていると、紳士は、
「万助さん、何もそう驚かなくてもいいよ。私は魔法使いでも、何でもない。今までみせた事は、みんな科学で出来る事なんだよ。万助さんは、テレビジョンと云って、遠方の事が、手に取るように見