抗をしようともせず、今にも泣き出しそうな顔で、僕の顔を恥めしそうに見上げた。
「亡恩の顔だ」
僕は何となくそう思つたが、急に彼が哀れになつた。彼は彼だけの理由があつたのだ。そう思つて僕は上げた手のやり場に困つた。さりとて、彼に謝まる気にも、毛頭なれなかつた。