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「護身用でしょうか」

「いゝや、そんな事ではあるまい。僕の想像では彼は宝石が必要だつたんだ」

「えつ、では誰かに譲る為に――」

「いゝや、隠す為だ。つまり彼は一時彼の隠場所にブルドックの首環を選んだが、余り安全とも思われないし、それに最近に何人かに感づかれた事に気がついたので、もつと安全な場所に隠す為に、夜遅く犬を連れて出かけたのだ」

「そうでしようか」

「そうだと思う。そして前後の事情から察するに、彼が殺されたのは帰り途であつて、出て行く時ではない。だから彼の殺された時には、もう宝石は首環から出されて、安全な場所に隠された後なんだ」

「じや」青年は眼を丸くした。

「宝石はどこかに安全に隠されているんですね。高野を殺した犯人は何も隠されていない首環を一生懸命に探しているんですね」

「うん」竜太は大きくうなずいた。

「あゝ」青年は安心とも気懸りともつかぬような溜息をして呟いた。

「一体どこへ隠されたのだろう」

「その隠場所については」竜太はニヤリとして、

「僕には少し心当りがあるのだ」

「えつ、それはどこですか」青年の眼は輝いた。

「高野の家はこゝから遠くない雑司ヶ谷にあるのだが、彼の家の近所には、広い草原や、小さい丘、雑木林などが可成ある。彼が犬を連れて散歩と称して出たと云う所から見ると、電車に乗つたりするような遠くへは行くまいと思う。先ず今云つたような人気のない所へ、土を掘つて埋めたのだよ。極く原始的な隠し方だね」

「それじや」青年はガッカリしたように、

「分らないのも同様です。そんな漠とした事では手のつけようがありませんもの」

「所が、そうでもない」

「えつ、それでは何か見当がついているのですか」

「うむ、鳥渡来給え」