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穴の事を知っていたのです。
それで茂吉はあの男にその事を相談すると、暗号だけ知っていても肝心のその足の中に入れてあった宝石がなくては何にもならないというので、あなたに眼をつけ始めたのです。無論悪人共はあの穴に宝石があって、それが何かの役に立つと考えたのです。友田商会の社長とか、骨董屋の番頭とかいうのはみんな
ところで、あの二人はいつの間にか私達の事を嗅ぎつけていたと見えます。私達があなたの郷里の方に出かけたので、二人はきっと私達が宝の
聞き終った直子は感謝に堪えないように、繁太郎の顔を見ながら、
「あれもこれも皆あなたのお蔭ですわ。私はあなたのお蔭で救われました」
「いいえ」繁太郎は首を振った。「私こそあなたに救われたのです。私は幸福です」
そう云って繁太郎は立上って固く直子の手を握った。直子はポッと顔を赤くしながらじっと彼の