『と、友吉さんじゃない――』
『小夜ちゃん、やっぱり。』
友吉は大きく息を弾ませて、グッと女を抱き寄せた。
最後の百弗
真夜中を
その一隅で、友吉は稲妻ジムと最後の勝負を争っていた。
今度は友吉の形相が変っていた。前二回は友吉は勝敗は眼中になかった。只胸中悶々の情をやる為に、勝負を争っていたのに過ぎなかった。五千
然し、今は違う。彼は残った千弗足らずの金で、何としても五千弗の金を取戻さなければならないのだ。
友吉は軽率だった。尤も上海であらん限りの手段を尽して三月も探し廻って、何の手掛りも得られなかったとすれば、諦めるのも無理はなかったが、小夜子は五年以前に上海に来ると間もなく北京に連れて行かれ、そこでその多くの日を送って、上海へは
友吉の眼は血走っていた。彼は懸命に稲妻ジムの手許を見つめていた。もし、イカサマを見つければ、叩き斬って終う意気込みである。従って、ジムも慎重だった。ジムにも友吉の凄い意気は感ぜられるのだ。
友吉は前の二回の時ほど
友吉は最後の百弗を
これを取られればもう一文なしである。再び勝負を争うべき
南無八幡! 苦しい時の神頼みで、心に弓矢の神を念じながら、友吉はカードを引いたが、結果は遂いに負けであった。
友吉はあたりが急に真暗になったような気がした。が、漸く勇気を取戻して、強いて作り笑いをしながら、席を立とうとした。
と、静かに彼の肩を押える者があった。
見上げると、例の小柄な芸人風の日本人だった。友吉は掛け違って会っていないが、向