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余り長くなるので、出来るだけ簡単に結末を述べるが、犯人は間もなく捕縛せられ、事件は手塚が神の如くに推理した事に寸分違わず解決した。松坂は感謝の余り手塚に巨額の謝礼を出そうとしたが、彼は首を振って受取らず、その代りに松坂が欧州から持って帰った画のうち二三枚を貰い受ける事になった。
松坂鶴輔は手塚を清廉の士として激賞したが、手塚の人格について少しお
「ニウルンベルクの名画事件か。俺はあの事件が
「松坂邸へ乗込んで行くと、トントン拍子に推測が当ったが、ニウルンベルクの名画の縁から出たダイヤモンドが恐ろしく時代の古い上に、どう見ても最初からあの縁に這入っていたとしか思えないので、密愉入だと考えていた俺の考えは少しグラついた。ダイヤモンドはどうしても数百年来その縁の中に這入っていたものに相違ないとすると、粕谷がその事を知ったのも可笑しい、知らないとすると、画を盗む訳がない。で、俺もちょっと困惑したが、ふと思いついたのは、名画の縁から宝石が出たのは全く偶然で、他の画に盗んだ宝石が隠してあるのではないか、と云う事だ。現に繁松も他の画を秘密裡に税関から取出しているではないか。〔ママ〕
「そこで問題は例のベルリンから来たベルリンと云う電文だ。あれはベルリンにいる繁松の仲間からのもので、何かの知らせに相違ない。そこで気がついたのが、繁松の盗んだ画の作者の名さ。ボッチチェリの頭文字がB、ルーベン〔ママ〕がR、レオナルド・ダ・ビンチがL、ニウルンベルクの名画がN、どうだみんなBerlinと云う電文に当て
「思うに殺された繁松と云う男は小才の利く奴で、こっちから送ったのか、又向うにいる奴を
「ところがここに彼が致命的な失敗をしたと云うのはベルリンと云う電文を解き損った事だ。この電文はたしかに宝石の隠されている画を示しているのだからね。ところが、ベルリンにいる彼の仲間は彼の考える程利口な奴ではなく、作者の頭文字を綴るなんて、そんな気の利いた事は出来ないのだ。粕谷はつまり自分の智慧に倒れたのだね。ニウルンベルクの名画には偶然ダイヤモンドが這入っていたが、これは彼の手には渡らなかったし、その他ルーベンにしてもボッチチェリにしても、宝石なんか一
「で、つまり粕谷は哀れにも電文を解き違えて、ニウルンベルクの名画などを盗み出し、そのために