枚の画がこんな所に隠してあったのには、松坂は二の句が継げなかった。
「未だ驚く事がありそうじゃ」
一同が啞然としている間に、じっと耳を澄していた手塚は、何か物音を聞きつけたらしく、きっと押入の天井を見上げながら云い放った。
松坂を初め一同はもう手塚の無礼を咎める気などはすっかりなくなっていた。それよりは今は超人的な彼の手腕を信ずるように、彼の言葉を聞くと共に、云い合したように天井を見上げた。
手塚は素早く机と椅子を積み重ねると、軽々と天井によじ登って、暫くゴソゴソしていたが、仕掛けを看破ったと見えて、三尺四方程の穴を開けた。そこから彼は天井裏に這入ったが、やがて、真黒な大きな塊を抱えて、下へ降りて来た。
一同はあっと叫んで後に
「あっ、米田だ!」
五
繁松の室の秘密押入の天井裏に縛って
松坂が呆気に取られていると、粕谷老人はフラフラと倒れかかりながら、唇を
「御前様――お許し下さい――画を、画を
ここまで苦し気に云い続けた粕谷老人は頭をガックリ垂れると、バッタリ倒れた。
松坂と八巻とは驚いて右と左とから、老執事を抱えて、室の隅のベッドの上に静かに置いた。
「大丈夫だろうか」
「大丈夫らしい」
二人は心配そうに会話を交した。
その間に手塚は正気づいた米田を訊問していた。
「お前はどうしてこんな目に遭わされたのか」
眼をキョロキョロさせて
「御手数をかけまして申訳ございません。へい、実はちょっとした事から粕谷さんと喧嘩をいたしやして、かくの通りでございます」
「どう云う事で喧嘩をしたのか」
「それがその、誠に申上げにくいのですが、女の事でございまして」
「黙れ」手塚は大声に〔ママ〕怒鳴りつけた。「貴様は俺を