Page:KōgaSaburō-A Vacant House-1956-Tōhō-sha.djvu/12

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「君は何かい。あの検事の古手が君の話位で閉口して、この家を素直に元の持主に返したと思つているのかい。お人好しだね。そんな生優しい検事さんじやないぜ。御自身で実地調査に当空家へ御出張の砒、僕が君を威かしたように、先生をやつつけなかつたら、どうして成功するものか。ハヽヽヽヽ。然し、僕も道楽とは云いながら、君が流布した噂を近所から聞き込んで、検事さんを威したり、今日は又󠄂藤井老人の後をつけて、君が一緒にやつて来るのを知つて、先廻りしたり、いやはや、随分苦心したぜ。ハヽヽヽヽ」

 彼は頸に巻いた紫色の風呂敷を外しながらこう云つた。

 いつの間に来たか、台所の入口で藤井老人が胡散そうに私等二人を見ていた。