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「即ち、この家さ。彼は人知れずここに緑林荘を作って、それへ隠したのさ」

「え、え」私は思わず部屋の中を見廻しました。

「もう探しても遅いよ。わしがちゃんと見つけたよ」

 そう云って手は大口を開いて、ニタニタと妖婆のように笑いながら、いつの間に持っていたか、古い革袋のようなものを取り出して、ザラザラと床の上にあけました。

 おお、夥しい緑の財宝! サファイヤ、翡翠ひすい、トウマママリン、アクアマリン、エメラルド、青のう、数限りない緑の宝玉が紺碧の水を湛えた神秘の湖に落ちて、透き通った瑠璃るりまつを飛ばすように、眼の前に溢れ散りました。

(「新青年」昭和三年十二月号)