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年に涉り、その業績も一應完成の域に達󠄁したと云つてよい。外には先進諸󠄀家の裨益󠄁を受け、內には參加諸󠄀員の助成を得て、ともかくも一册のアクセント辭典の編󠄁成を慶するに及んだ。固より完全無缺とは誇稱されまいが、向後國語アクセントの規準として有力なる典據たるべきことは亦決して疑ない。自今本書參考の際、讀者󠄁より與へらるべき批判󠄃や指示をも期し、當職の士自身の啓󠄁發や覺知にも基き、徐々に修訂を加へつゝ、本書をして逐󠄁次完美の域に達󠄁せしめるより外なからうと考へるが、編󠄁纂者󠄁としては、こゝに何やら新に重荷を負ふに至つた心地もするのではないかと思ふ。況してや、現今アクセント諸󠄀型の推移とか、近時アクセント移動の趨勢とか、いふやうな興味ある問題にまで專門學徒を誘致し、少くとも新に人々のアクセントに對する關心を向上せしめる機運󠄁を作ることが、此の辭典によつて出來はしないかと思ふ。若しさう期待してよいのだと思ふと、吾々は一憂を抱きつゝも、こゝに大いに一喜の情󠄁を表はしたくなるなるわけである。

 最後に、本辭典の作成につきては、囑託三宅武郞氏其他の編󠄁纂係員及び放送󠄁員諸󠄀氏の少からぬ努力を銘記せねばならぬ。

 昭和十七年三月新村 出