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ぜしめる。「いき」な音󠄃曲に於ては變位は多く一リズムの四分󠄃の一に近󠄃い。

 以上は田邊氏の說であるが、要󠄃するに旋律上の「いき」は、音󠄃階の理想體の一元的平󠄃衡を打破して、變位の形で二元性を措定することに存する。二元性の措定によつて緊張が生じ、さうしてその緊張が「いき」の質料因たる「色つぽさ」の表現となるのである。また、變位の程󠄃度が大に過󠄃ぎず四分󠄃の三全󠄃音󠄃位で自己に拘束を與へるところに「いき」の形相因が客觀化󠄃されてゐるのである。リズム上の「いき」も同樣󠄂で、一方に唄と三絃との一元的平󠄃衡を破つて二元性が措定され、他方にその變位が一定の度を越えないところに、「いき」の質料因と形相因とが客觀的表現を