Page:Iki-no-Kozo.djvu/114

このページは校正済みです

とはならないのが普通󠄃である。格子縞に曲線が螺旋狀に絡付けられた場合、格子縞は「いき」の多くを失なつて了ふ。縱縞が全󠄃體に波狀曲線になつてゐる場合も「いき」を見出すことは稀である。直線から成る割󠄅菱模樣が曲線化󠄃して花󠄄菱模樣に變ずるとき、模樣は「派󠄄手」にはなるが「いき」は跡形もなくなる。扇󠄃紋は疊扇󠄃として直線のみで成立してゐる間は「いき」をもち得ないことはないが、開扇󠄃として弧を描くと同時に「いき」は薰をさへも留めない。また、奈良朝󠄃以前󠄃から見られる唐󠄃草模樣は蕨手に卷曲した線を有するため、天平󠄃時代の唐󠄃花󠄄模樣も大體曲線から成立してゐるため、「いき」とは甚だ緣遠󠄄いものである。藤󠄄原時代の輪違󠄄模樣、桃山から元祿󠄁へかけて流行した丸盡し模樣なども同樣