Page:Hadaiusu(Kirishitan shiryō).pdf/26

このページは検証済みです

連、彼が許へ訴へ遣し、闇打にもせよと云しに依て、左あるべき由を吿げ知する者候し間、危邦には居らずとさへ申すに、况や自己の危き所をば退かざらんやと存じ、木津川より船に乘り、枚方〈一本枚方ヲ牧方ニ作ル〉の上、中宮と云在所に行き、暫く其所に隱居致し候ひき。其後も覘ひたるように承れども、さすが治まる御代には、猥に宿意も遂げ難きにや、さることも候はず。融の諷〈一本諷ヲ謠ニ作ル〉にて候か、秋の夜の長物がたりよしなや。先いさや、汐を汲んと翁の申せし節に、無益の長物語に夜を深して候。件の如のことを申さ〈一本サヲセニ作ル〉ば、誠に秋の夜の千夜を一夜になし語るとも、詞は殘り夜は明け候ひなん。万事は御推察あるべし。

 元和六庚申曆孟春

ハビアン誌之