中世兵制文官武官を分つ中世に至るに及びて、唐制を模倣し、官を文武に分ち、乃特に將帥を置き、六衛【六衛】左右の近衛、左右の衛門、左右の兵衛の將、天子の親兵を將ゐたり。而して兵部、八省【八省】中務、式部、治部、民部、兵部、刑部、大藏、宮內の一に居り、左右の馬寮を建て、以て貢馬を蓄はしめたり。而して邊要の國は、諸郡に皆軍團あり、一國の丁を三分して、其一を取り、五人を伍となし、伍二を火となし、火五を隊となし、隊二を旅となし、旅十を團となす。各首領【首領】大毅、小毅、主張、校尉、旅師、隊正等軍團組織あり。一火六馬とし、騎射に便なる者は、特に騎隊となす。皆守令【守令】國司に任じて簡點せしむ。京を衛り邊を戍る。簿を按して差遣す。征伐を擧ぐる每に、沿道の諸國に、契敕【契敕】符節の敕書を須ゐて勘合せしむ。凡征行萬人に、乃將軍あり、副將軍あり、軍監あり、軍曹あり、錄事あり、三軍を總ぶる每に、大將軍一人あり。大將の出征には、必ず節刀を授く。軍に臨み敵に對する時、首領の約束に從はざる者は、皆專决を聽す。還る日、狀を具へ以聞す。勳位十二等を建て、功を論じ賞を酬いて、其兵を罷む。凡そ其器仗は兵庫に藏め、出納するに時を以てし、皆之を兵部に管せしむ。中朝兵を制せしこと、大略此の如くなりき。上世の旨に及ばずと雖も、其亂を防ぎ禍を慮るは、密なりと謂ふべし。
是故に事有らば則
尺一【尺一】詔版なり長一尺一寸の
符を下せば、數十萬の兵馬立所に
具る。而して平時は散