ぎらしげなるをば。いとさしもえせずかし。なをさやうに人あなづられならむほどの物みは。とゞめつべし。又なにごともいみじうしたてたりとみえながら。ひな〴〵しからぬ氣色したるは。いとしるしかし。うつくしきちごいたしすへたるこそおかしけれ。にくげなるはみぐるし。なに事も人がらことがらにすこしはよるべきにや。なを見るには。かへさこそまさりておかしけれ。昨日はよろづの事うるはしくて。一條のおほぢのつねはいとひろきも。せばく所なき心ちして。くるまにさしいりたる日のあしもまばゆければ。あふぎしてさしかくし。とかくゐなをりなどしつつ。ひさしくまつもくるしうあせがましかりしを。けふはいととくいそぎいでて。うりう院。ちそく院などのほどにたてるに。よきくるまどものかぎりあまりあきたくさしこみてはあらず。さはらかにたちたるなどおかし。日はいできたれど。そらはなをうちくもりたるに。いかできかんとよるもめをさましおきゐつゝまつほとゝぎすのあまたさへづるにやときこゆるまでなきひゞかすをいみじうめでたしと思ふに。うぐひすもそれをまねばむとにや。おいたるこゑしてにせんとおゝしこゝちそへたるも。ほかにては心をくれたる心地してにくけれど。所がらにやとり〴〵のとりのおほくぞかしと思ひなされて。れいよりはおかしうぞきこゆる。しばしばかりありてみやしろのかたよりあか衣きたる物どもつれだちて。いかにぞことはなりぬやととへば。またむこといらへて。御こしどもなどもてかへる。かれにたてまつりたらむ人かなと思ふもめでたくかたじけなきに。さるげすどものけぢかくいかでさぶらふにかとぞおそろしき。はる