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わがたうりぬるよしなど。心ひとつやりていひきかすれど。ふかき心もしらぬわかき人々などは。なにとかは思はむ。わが大事と思はぬまゝに。おこがましげに思ひて。かほのまねをしいひわらへどさもしらず。よきにけいし給へ。あがきみなどいふこそいとおかしけれ。さいふもしえたるおりにはいとよし。えずなりぬるこそあはれなれ。

三月三日は。のどやかにてりわたりたるこそよけれ。もゝの花のいまさきはじめたる。やなぎなどいとおかし。こぞよりさきなれ。はゞひろになりたるはいとにくし。あまりとくさきてちりたるとしもありかし。それはいとわろし。おもしろくさきたるさくらをなからおりて。おほきなるかめにさしたるこそわざとまことの花がめにさしたるよりもおかしけれ。さくらのなをしにいたしうちぎなどしたるまらうどにまれ。御けうとのきんだちにまれ。そこちかくゐてものがたりなどし給ふるいとおかし。そのわたりにとりむしのひたひつきいとうつくしうてとびありくもおかし。四月のころもがへいとおかし。かんだちめ殿上人もうへのきぬのこきうすきけぢめばかりにて。しらがさねどもはおなじさまに。すゞしげなるすがたどもおかし。きゞの木の葉もまだしげくはあらず。わかやかにあをみわたりて。かすみもきりもへだてぬそらのけしきなどこそたゞなにともなくおかしけれ。すこしくもりたる夕つがた。よるなどしのびわたる郭公のそらみゝかとおぼゆるまで。ほのかなる聲をきゝつけたるは。まことにかぎりなくおかしうおぼゆ。まつりちかくなりては。あをくちば二あゐなどやうなる物ども。ほそびつにいれつゝみ。もしはかみひとひらばかり