こうじて。さらにつかずふようなめり。いとはかなしとやとて。とらせつる物どもとり返して。あいなく我ながやかに。うちあくびあめきて。ひたいよりいたゞきざまに。かしらさぐりあげてたちぬる。いと〳〵おしうすさまじげなり。ことしはかならずつかさなるべしときこえて。はやうありし物どもなどのかたゐ中にすみつき。もしはほか〳〵にゆきちりたるなどもみなきあつまりて。いでいるくるまにも。ながへのひまなくつかへ。物まうでのともにも。われも〳〵とつかうまつりなどしつゝ。をの〳〵物くひさけのみ。心地よげにもてなしつゝぢもくをまつに。はつるあか月になりぬれば。かどたゝく人やある〳〵とみゝをさゝげたるに。をともせずさきおふこゑ〴〵しつゝ。かむだちめなどみないでたまひぬなり。とくきゝてつげよとて。うちわたりにやりをきつるざうしきおとこなどのさむさもおぼえざりけるなど。いまぞいとすさまじげなる氣色にて。わなゝきいできたる。あゆみくるけしきしるければ。いかにぞなどもとひもとはれずかし。ほかよりきたる人のさていづくにかならせ給へるなどとふめれば。なにのぜんじにこそはなど。かならずいらふる。さだまりたる事ぞかし。まことにたのみける人は。すさまじとのみにもあらず。いみじうなげかしと思ひたる氣色。いとゞおしげなり。ひるになるまゝに。さぶらひにひまなくゐたりつるものども。やう〳〵ひとりふたりたちすべりいでつゝいぬめり。えさりがたくてとしごろはゆきはなれぬ二三人ばかりのこりたるも。たかやかにうちなげきつゝ。よりゐたる氣色どもこそあはれにすさまじげなれ。せめて思ひあまりぬるなぐさめにや。來