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よくしたる所のなに事にかあらむずることあるかたに。君はおはしませば。こなたには人もなくて。まだ御かうしなどもまいらぬに。ながすびつに火をいとおほくおこしたれば。その光のいとあかきに。もやのみすのもかう。御丁のかたびらひもなどのいとつやゝかに。そばよりみいれられたるこそめでたく心にくけれ。またしうもおはしまし。人々もさぶらふに。うちの人內侍のすけなどのはづかしげなるがまいりたるとき。御まへちかくて御ものがたりなどある程。御となぶらも物のかくれにとりやりなどしたれど。すびつひおけの火ばかりには。ものゝあやめもいとよろしうみゆれ。心にくきいままいりのしそくさせて御らんずるきはにはあらぬが。まいりたるもさやうにぞあるべき。よふけて人のこゑもせず。みなおほとのごもりたる氣色なるに。とのかたに殿上人としづやかに物がたりしつゝゐたるに。いとおくふかうはあらず。ごいしけにいしのいるをとのしたるこそ心にくけれ。火とりのはしかひのなりたるをともおかし。又いとようなるびはをつとをさへて。ねもいださぬ物から。つまびきに心とゞめてひきたるを物へだてゝきゝたるも。まだねざりけると思ふにいとこゝろにくし。あざやかなるかいねりにかみのおもやかにふりやられたるをと。よひにまいりたるそうをあらはなるまじうとてつぼねすへて。冬は火おけなどとらせたるに。聲もせねば。いぎたなうねたるなめりと思ひて。これかれ物いひ人のうへほめそしりもしたるに。ずゝ數珠のすがりの心にもにあらず。ころもの袖けうそく脇息などにあたりてなりたるこそ心にくけれ。よくてうじたるひをけに。はひのきはきよげにみえて。火