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かし。
ふる物は。時雨。あられ。雪。さてはまた五月の四日の夕つかたよりふる雨の。五日のつとめて。いとあをやかなるのきのあやめのすそよりおつるしづく。よもぎのかほりあひていとおかし。
風は。あらし。木がらし。二三月ばかりの夕つがた。ゆるく吹たるあま風。又八月ばかりの雨にまじりて。ひやゝかに吹たる風おかし。
霧は。川ぎり。
木の花は梅。ましてこう梅はうすきもこきもいとおかし。櫻ははなびらおほきに。葉の色いとこきが。枝ほそくて。かれはなに咲たる。ふぢのしなびながく色こく咲たる。いとおかしうめでたし。四月つごもり。五月ついたちごろのたち花の葉は。いとこくあをきに。花はいとしろくさきて。雨うちふりたる。つとめてはなべてならぬさまにおかし。花のなかより身のこがねのたまとみえて。いみじうきはやかに見えたるなどは。春の朝ぼらけの櫻にもおとらすぞおぼゆる。ほとゝぎすのよすがとさへおもへば。なをさらにいふべきにもあらず。なしの花は。よにすさまじくあやしき物にて。はかなきふみうちつけなどもせず。あい行をくれたるかほなど。うちみてはたとひに人のいふも。げに色よりはじめてあはひなくすさまじければ。ことはりと思ひしを。もろこしには。めでたきものにして。ふみにもおほくつくりたるを。さりともあるやうあらんと思ひて。せめて見れば。花びらのさきに。おかしきにほひこそ。心もとなうつきためれ。楊貴妃の御門の御つかひにあひて。なきけるほどのにほひにたとへて。梨花一枝春帶㆑雨といひたるは。おぼろげならじとおぼゆるに。よろづの花よりはめでたし。桐の花は。むらさきに咲たるはおかしきを。葉のひろごりたるさま