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群書類從卷第四百七十九


雜部三十四

枕草紙

淸少納言


春はあけぼの。そらはいたくかすみたるに。やうしろくなりゆく山ぎはのすこしづつあかみて。むらさきだちたる雲のほそくたな引たるなどいとおかし。

夏はよる。月のころはさらなり。やみもなをほたるおほくとびちがひたる。又たゞ一二などほのかにうちひかりてゆくもいとおかし。

雨のどやかにふりたるさへこそおかしけれ。

秋は夕暮。夕日のきはやかにさして。山の葉ちかう見えわたるに。からすのねにゆくとて。三四二などとびゆくもあはれなり。まして雁のおほく飛つらねたる。いとちいさく見ゆるはいとおかし。日いりはてゝ後。風のをと。むしの聲。はたいふべきにもあらずめでたし。

冬はつとめて雪のふりたる。さらにもいはず。霜のいとしろきも。又さらねどいとさむきに。火などいそぎおこして。炭もてありきなどするを見るも。いとつきし。ひるになりぬれば。やうぬるびもてゆきて。雪もきえ。すびつ。火おけの火もしろき。はひがちになりぬればわろし。 

ころは。 正月。三四月。五月。七八月。九十月。十一月。すべてみなおりにつけつゝいとおかし。 せちは五月五日。七月七日。九月九日もお