Page:Gunshoruiju27.djvu/166

このページは校正済みです

にも。大事を思はからふ者。物とがめをせず。事ならぬことを事になさじといふぞかし。增て君の御犬事にまいらすべき命を細事故に失候はむには。人たね有なん哉。さる不忠のをのこをのこものイには。所知を給ても何かはせむ。遠からぬ事ぞかし。早河の戰の時は。敵既に近付參事五六度也。思食切たりしかども。御心ながくためらひき。心短くては。日本國の權を取けん哉。まな鶴の海を渡し給し時の心細さは。かゝるべしとはおぼしめさざりしか共。廿万騎の御勢をぐして。きせ川へ着せ給ひたりし時は。何樣に靜りたる時の御心地よりも。猶いさましかりし。大方源平の亂なれば。唐土までも聞えざらんや。人もさこそは討れぬらめと覺ぬべきを。御方にとりては。北條三郞。三浦介。狩野介。佐那田與市。藤田小三郞。河原太郞。同次郞。此等計こそ討死の者にては有らめ。是等は自然の御運のしからしめたる事といひながら。心ながきたばかりの末。ひかずばかからんやは。されば去年の御在京に。初て院の後白河見參に入て。さまの御諚共を下されし中に。平大相入道淸盛の心短くて。何事にイも念ずる事の叶ざりしが。かくては世をたもち。天下をイ御うしろみ申事有べからず。臣はいみじく心ながくて。つらき事をもゆゝしく忍びにけるが。有難も行末もたのもしく思召ぞよと御感有き。すべて筆とりもまして弓取も。むかひたる目計かかりて故實なからん事は。世にもはかなかるべき事也。たとへば鹿狐をも見あひぬるをの事といひて射んには當りこそせざらめ。却て物題のかはりうする先表也。便宜能寄合こしらへて。たらゝをもむけて。射にくき所にて弓をひき。まうけえたる所にて。矢を放つべきにこそ。一旦心のはやりの儘にしたる事