は。高弁が有樣。まゝ聞及人も候らん。若きより本寺を出て。所々に迷ひありき候し後は。日來習置候し法味の義理の心に浮だにも。更に不㆓庶幾㆒處也。まして世間の事においては。ひとたびも思量するにをよばずして。年久しくまかりなり候ひき。されば貴賤に付て人の方人せんと云心を廢すといふとも。沙門の法に有間敷事に候。其上かゝる心の一念きざせども。二念と相續する事なし。何によりてか少も人の方人する事候べき。又人の祈は緣に付てしてたべと申人も多く候しか共。一切衆生の三途にしづみてさし當てくるしみ候をこそ先祈資べくは祈候はむずれ。是等を皆祈浮て後こそ。浮世の夢のごとくなる暫時の願をば祈ても奉らんずれ。大事の前に小事なしと返答して。更に不㆑用して遙に年月をつもれり。されば高弁に祈あつらへたりと申人。今生界の中にはよもあらじと覺候。然るに此山は三寶寄進の所たるに依て。殺生禁斷の地なり。依て鷹に追るゝ鳥。獵ににぐる獸。皆こゝにかくれて命をつなぐのみ也。されば敵を逃るゝ軍士の勞して。命計を資て。木のもと岩のはざまに隱居て候はんずるをば我身の御とがめに預て。難にあはんずればとて。情なく追出して敵の爲にからめとられて身命を奪れん事を顧りみん事やは候べき。我本師能仁のいにしへは。鳩に代て全身を鷹の餌となされ。又飢たる虎に身をたび候しぞかし。其までの大慈悲こそ及候はずとも。かばかりの事だになくやは候べき。かくすことならば。袖の中にも袈裟の下にもかくしてとらせばやとこそ存候しか。向後も〳〵可㆑資候。是政道のために難儀なることに候はゞ。卽時に愚僧が首をはねらるべしと云々。泰時朝臣是仰を聞給。頻