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く。かほもこゝはと見ゆる所なく。いとしろう。手つき。かいなつき。いとおかしけに。かみは。みはしめ侍し春は。たけに一尺はかりあまりて。こちたくおほかりけなりしか。あさましうわけたるやうにおちて。すそもさすかにほそらす。なかさはすこしあまりて侍めり。こまといふ人。かみいとなかく侍りし。むかしはよきわかうと。いまは琴柱に膠さすやうにてこそ。さとゐして侍なれ。かういひて。心はせそかたう侍るかし。それもとりに。いとわろきもなし。又すくれておかしう心おもく。かとゆへもよしも。うしろやすさも。みなすることはかたし。さまいつれをかとるへきとおほゆるそ多く侍る。さもけしからすも侍ることゝもかな。齋院選子に。中將の君といふ人侍るなり。聞侍るたよりありて。人のもとにかきかはしたる文を。みそかに人とりてみせ侍し。いとこそえんに。われのみ世にはものゝゆへしり。心ふかきたくひはあらし。すへてよの人は。こゝろもきもゝなきやうに思て侍るへかめる。見侍しにすゝろに心やましう。おほやけはらとか。よからぬ人のいふやうに。にくゝこそおもふ給へられしか。文かきにもあれ。歌なとのおかしからんは。わか院より外に誰かみしり給ふ人のあらん。よにおかしき人のおひいては。わか院こそ御らむししるへけれなとそ侍る。けにことはりなれと。わか方さまのことをさしもいはゝ。さい院よりいてきたる歌の。すくれてよしと見ゆるも。ことに侍らす。たゝいとおかしう。よししうはおはすへかめる所のやうなり。さふらふ人をくらへていとまんには。このみ給ふるわたりの人に。かならすしもかれはまさらしを。つねにいりたちてみる人もなし。おかしきゆふ月よ。