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て尋ねきたり。夕つけてまたかの寄宿の寺へもまかり侍り。明る日は光明院より夢庵をも招請して齋をまうけらる。

廿二日。高野に參詣のことおもひ立て。宗珀といふものをしるベとたのみてまかりたち侍り。さのといふ處に輿かきすへたるほど。市人さはぎたるイをみて。

 いつみなるさののいち人たち騷きこの渡りには家も有けり

大島の社信田杜などいふところどもうち過て。いづくの程にか。やしろのあるまへに輿かきすへたる所へ。根來よりのむかへとて。馬二疋ひかせて。人あまたはしりきたりて。食籠錫のものなどもたせたり。おもひがけずなむおぼえ侍し。かの寺の十輪院といふは。當寺一山の學頭。碩學の聞えありとなむ。坊にはきのふ灌頂を行ひて後朝のいとなみさはがしければ。弟子の實相院といふがもとにとゞむべきよしの案內となむ。とかくして根來にいたりたりしに。衆徒十人あまりたちつらなりて。むかへ入べきのよしなり。たびのやつれ思ひがけぬことに侍れば。さまに色代しかへして。輿ながら大門のうちまでのたりし。後にきけば。をるベかりける所に侍りとなむ。かくてすぐに諸堂巡禮し侍り。山中みるもののごとくにて。かたはらいたさいふばかりなし。本堂傳法院にておもひつゞけ侍し。

 高野山わかれてこしもことさらに法を傳へむよゝの爲かも

錐もみ不動を拜見して。

 うこきなき身を分てける姿そと血の淚をもなかしてそみる

覺鑁上人の詠歌に。夢のうちはゆめも現も夢なれはさめなはゆめもうつゝとをしれといへる。續後拾遺集に入るにや。思ひいでられて。

 いつさめむうつゝもしらす七十大永三のけふたにおなし夢の世中

實相院といふ所につきて。これかれうちやす