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し。芝といふ所をすぐるとて。
露しけき道の芝生をふみちらしこまにまかする明暮の空
大森といふもりのかげにやすらひて。
大森の木の下かけの凉しきにしるもしらぬも立とまりけり
河崎といふ海ちかき宿にて。使など跡にやりて。こゝにてしばしやすらへば。長光寺日耀上人くだものなど僧にもたせてをくりたまひぬ。馬むけんと立物するに。洲崎にかさゝぎのたてりければ。
朝朗かすみうなかす川さきに波とみるまてたてるしら鷺
いさごといふ所にて。
鷗ゐるいさこの里をきて見れははるかにかよふ沖津うら風
かの川にて。
蜑小ふね軒はによする心ちしてなかめえならぬかの川の里
かたびらと名づくる所にて。
日さかりはかたはたぬきて旅人の汗水になるかたひらの里
平塚にて。
あはれてふたか世のしるし朽はてゝ形見もみえぬ平塚の里
この
草枕をき行露も大磯の浪かけ衣ほしそわひぬる
こゆるぎの磯にて。
浦風にまたしき秋はこゆるきの磯立ならしけふや暮なん
庚申といふ所とをしふるに。夜もすがら月をみて。
名にしおへはねぬよの里のかり枕傾くまての月をみむとや
梅澤といふ里にて。
春ならは旅行袖もつらからし名のみは匂ふ梅澤の里
車坂といふ里にて。夕立頻にふりきそへば。
鳴神の聲もしきりに車坂とゝろかしふるゆふ立の空
小田原といふ所にて。
なる子引賤かをた原みわたせは稻葉の末にさはくむら鳥
板橋といふ處にて。
朽にける槇のいた橋苔むしてあやうなからも渡るかち人