Page:Gunshoruiju18.djvu/636

このページは校正済みです

  寄露戀

 我命きえすはありとも何かせむ心をかるゝ露の契に

  述懷

 はつかしな哀むかしへありきてふ身の世かたりの一節もなし

いまだ都に中納言入道宋世ありしとき。するがの國へ下り侍るよしきこえしかば。侍從大納言實隆卿申つかはされける。

 こえはまたいかに忍はむうつの山とをき昔も近きむかしも

  返し

 今はまた夢はかりなるあらましのうつゝになれは宇津の山越

これはむかし曩祖雅經卿ふじみ侍らむとてくだり侍りしに。宇津の山にて路分し昔は夢かうつの山あとともみえぬつたの下道とよめり。また父雅世卿かの山をとをり侍りしに。雅經卿の歌をおもひいで侍りて。むかしたにむかしといひしうつの山こえてそ忍ふ蔦の下道とつらね侍りしことを。遠きむかしもちかき昔もとよめるなるベし。

宗祇法師。たちばなといふたきものをむまのはなむけに送り侍るとて。よみてつかはしける。

 末とをく立よりやかて思ひやるきみになひかむふしの煙を

  返し

 おもひたつふしの烟もたち花のなひく烟にまつやしるらん

三井寺のほくりむばうといへる人の本よりつかはしける。

 うへもなき二の道にふしの山ならへて三のたかねならまし

  かへし

 ふしの山をよはぬ道は遮莫ねかひはみつのたかねならまし