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るや。諸大名宿所には御風呂殿の御用意。御樽廿荷。卅荷。羹物已下每日の事共を臨川坊海什具に物語候し。かたるやうにおぼえ書にて候。只昔のことをくはしく御しり候へば。自他の忠の程をもしろしめすべく候。委細に御知候て。扨御しり候はぬやうに何事も又大やうにや候ベからん。大名にも高下しな御わたり候へば。げにも御供衆外樣奉公衆どもの次第わけ御知候て肝要候。此一册にも細川下野守同右馬頭山名中務大輔などは御供衆とみえ候。こゝもとむまれかはり候て無案內のみにて有げに候。都鄙みだれはてんことは何事も差異候はぬやうには候得ども。昔よりの次第は御存知候ではよく候はむずらむと注候ではよく御座あるベきこと存任申上候。返々物しり顏。一笑々々。

八旬有餘宗長


富士歷覽記

入道中納言雅康卿


明應八年五月三日。富士歷覽のために都をおもひ立侍りて。江州柏木鄕にとゞまりて。四日の朝にたち侍るに。社頭をふしをがみ奉りて。

 柏木に跡たるゝよりも里のうちにさこそ葉守の神も守らめ

內白川。外白川。きのふの雨に水まさりて人々わたりかね侍れば。心のうちに祈念侍りし。

 我たのむうちとの神にまかすれはこの白川もやすく渡らん

山中と申所にてほとゝぎすをきゝて。

 よふこ鳥それかと聞は山中におほつかなくも鳴ほとゝきす

關民部大輔盛貞在所につきて。先在所の寺にとゞまりけるに。今夜はあやめのまくらしく夜なりとて。しき侍りて。

 都にも思ひはいつやかりねしてあやめの枕ひとりしくよを

七日。雨によりて逗留し侍りしに。民部大輔のもとよりよみてをこ[せ脫カ]りし。

 みやこ人さこそ心のうかるらむいふせき里に雨やとりして