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いづくの程にて侍しやらん。社壇あり。人にとひ侍れば。八幡宮と申。鳥井の前にて。今度の御旅のめでたさ。御神慮も殊に揭焉におぼえ侍て。

 いはし水君か旅行すゑも猶まもらむとてや跡をたれけん

國々所々の御路次。兼日用意のほどもみえて。いづくもさはる所なく。御路つくらせ侍りけるとみえしかば。

 民やすく道ひろき世のことはりも猶末遠くあらはれにけり

高師山と申も此あたりにてやとみえて。

 富士のねに及はぬ名のみたかし山高しとみるも麓なるらし

十五日。遠江國鹽見坂にて御詠を下され侍しに。

 しほ見坂さか行君にひかれてそさらに名高きふしを眺むる

又今日二子づかと申所にての御詠とて。同下され侍し次に。

 富士をみる此ことの葉に顯れて名に立のほる二子つかかな

十六日。橋もとの御とまりを夜をこめて立侍しかば。濱名橋をうちわたして。

 忘めやはまなのはしもほのと明わたる夜のすゑの川浪

 濱名河夜みつしほの跡なれやなきさにみゆる海士の小舟は

時雨けしきばかり過侍しかば。

 旅衣しほれたにせぬしくれ哉もみちをいそくけしき計りに

さき坂山と申所にて。

 遠くみるふしの高ねもしら鳥のさき坂山をけふそこえぬる

十七日。此國の府中を立侍るほどに。かけ川と申所にてあめふり侍しかば。

 たひ衣袖になみたをかけ川やぬれていとはぬけふの雨かな

菊川と申所にて。

 汲てしる君か八千代も末とをき名にきく河の花の下水

さやの中山を越侍とて。

 なをさりにこゆへきものか我君のめくみも高きさやの中山

こままがはらとかや申所にて御詠を拜見し奉りて。

 たくひなくあすみよとてや秋の雨にけふ先ふしの搔曇るらん

かくて駿河國藤技と申所に御つきあり。十八