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 里の名に絕ぬ星合あひかたのたなはたつめの契ともかな

かさ松と云あたり過侍りしに。

 おのつからゆきゝの宿やかさ松のかけに立よる旅の諸人

見わたりの程。朝和のうら氣色いとみ所多かり。餘て撥掉綣去浪疊朝霞繡飜といへるふる事も。めのまへにぞうかび侍るや。

 こく船も霞わたりて朝和の浦半のみるめあかすも有哉

たてり繩手と申所に賤の女などのひなびたるおほくぞ立ならびて行客をみる。

 都人みるそとみえて賤の女もたてる繩手に立ならひつゝ

あやひがさと云所をかくして。

 飛鳥のおりし色よりくれは鳥あやひかさまに春をしたはん

くし田川わたり侍るとて。

 しめはへるくしたの川の水淸みわたる心のあかものこらす

齋宮と申あたり過侍るに。昔覺ゆることも侍りし中にも。天曆の御時かとよ。齋宫下り給ふけるに。朝忠中納言長奉送使に侍りて。萬代のはじめと今日を祈り置て今行末は神そしるらんと詠ぜし事おもひ出られ侍りて。

 萬代といのる心はけふそへんいつきの宫の跡をたすねて

あけ野とかやにて。

 分ゆかん花にあけのゝ俤も霞に殘るしのゝめの空

さむ風といへるは富士の根みゆる所なめりと聞侍りて。

 ふしのねの雪をほのみてたかせより寒風としも爱をいふ覽

土大佛と申は。俊乘上人とかやきこえしひじりの。東大寺再興の事を祈請のため大神宮にまうで侍りしに。夢の吿ありて。あやしき牧童の現じてつくりなせる毗盧遮那の御かたちなるベし。是又應化利生の御ちかひは靈山淨土の生身。よもへだてあらじかし。

 此山はわしの高ねか更に又遮那の姿を仰きみるかな

みや川御祓など嚴重におぼえて。

 我君の高きみそきを宮川や波の白ゆふ千世もかけこせ

山田に御着のほど。

 契りある千木高知て神もさそ君待えたるけふの嬉さ