Page:Gunshoruiju18.djvu/60

このページは校正済みです

らく。太平樂。賀てんなといふまひとも。ちやうけいし長慶子をまかで音聲にあそひて。山のさきのみちをまふほと。とをくなりゆくまゝに。ふえの音も。つゝみのをとも。松風も。こふかく吹あはせて。いとおもしろし。いとよくはらはれたるやり水の。こゝちゆきたるけしきして。池のみつなみたちさはき。そゝろさむきに。うへの御あこめたゝふたつ奉り給へりけり。左京の命婦の。をのかさむかめるまゝに。いとをしかりきこえさするを。人々はしのひてわらふ。ちくせんの命婦は。こ院圓融のおはしましゝ時。この殿の行幸はいとたひありしことなり。そのおりかのおりなと。おもひいてゝいふを。ゆゝしきこともありぬへかめれは。わつらはしとて。ことにあへしらはす。木丁へたてゝあるなめり。あはれいかなりけんなとたにいふ人あらは。うちこほしつへかめり。御前の御あそひはしまりて。いとおもしろきに。わか宮のみ聲うつくしう聞え給ふ。右のおとゝ顯光。萬歲樂みこゑにあひてなんきこゆると。もてはやしきこゑ給ふ。左衞門のかみ公任なと。萬さいらく千秋樂と。もろこゑにすして。あるしのおほいとの。あはれさきの行幸を。なとてめいほく面目ありとおもひ給へけん。かゝりけることも侍りける物をと。ゑひなきし給。さらなることなれと。御みつからもおほししるこそ。いとめてたけれ。殿はあなたにいてさせ給ふ。うへはいらせ給て。右のおとゝを御前にめして。筆とりてかき玉ふ。宮つかさ殿の家司のさるへきかきり加階す。頭辨道方してあないは奏せさせ給めり。あたらしき宮の御よろこひに。うちの上達部引つれて拜したてまつり給ふ。藤原なからかどわかれたるは。列にもたち給はさりけり。次に別當になりたる右衞門督大宮齊信大夫同人よ。