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 ことのはに をに神までも あはれとてなひくめりイ 八嶋の外の

 よつのうみ 波もしつかに おさまりて 空ふく風も

 やはらかに 枝もならさす ふるあめも 時さたまれは

 きみの みことのまゝに したかひて わかの浦路の

 もしほくさ かきあつめたる あとおほく それか中にも

 名をとめて 三代まてつきし 人のこの 親のとりわき

 ゆつりてし そのまことをは もちなから 思へはいやし

 しなのなる そのはゝきゝの そのはらに たねをまきたる

 とかとてや 世にもつかへよ いけるよの 身をたすけよと

 契りをく すまとあかしの つゝきなる ほそ川山の

 谷イにイ わつかにいのち かけひとて つたひし水の

 みなかみも せきとめられて いまはたゝ くかにあかれる

 いをのこと かちをたえたる ふねのこと よるかたもなく

 わひはつる こを思ふとて よるのつる なく宮こ

 いてしかと 身はかすならす かまくらの 世のまつりこと

 しけけれは きこえあけてし ことの葉も 枝にこもりて

 むめの花 よとせの春弘安三に なりにけり 行衞もしらぬ

 なかそらの 風にまかする ふるさとは 軒端もあれて

 さゝかにの いかさまにかは なりぬらん 世々の跡ある

 玉つさも さて朽はては あしはらの 道もすたれて

 いかならん 是をおもへは わたくしの なけきのみかは

 世のためも つらきためしと なりぬへし 行さきかけて

 さまに かきのこされし ふての跡 かへす

 いつはりと おもはましかはいふ人あらはイ ことはりを たゝすの森の

 ゆふしてに やよやいさゝか かけてとへ みたりかはしき

 すゑの世に あさはあとなく なりぬとか いさめをきしを

 わすれすは ゆかめることも またたれか 引なをすへき

 とはかりに 身をかへりみす たのむそよ その世をきけは

 さてもさは のこるよもきと かこちてし 人のなさけも

 かゝりけり おなしはりまの さかひとて 一つなかれを

 くみしかは 野中の淸水 よとむとも もとの心に

 まかせつゝ とゝこほりなき 水くきの 跡さへあらは

 いとゝまた つるか岡への 朝日かけ 八千代の光

 さしそへて あきらけき世の なをもさかへん

 なかかれと朝夕いのる君か代をやまとこと葉にけふそのへつる


のこるよもぎとかこちけるといふ所のうらがきに。くはうたいこぐうの大夫しゆんせいの卿の御むすめ。ちゝのゆづりとて。はりまのくにこしべのしやうといふ所をつたへしられけ