このページは校正済みです
けさうしつゝ。をとろのかんさし。おほやけ〳〵しきさまして。しんてんの東のわたとのゝ戶くちまて。ひまもなくをしこみてゐたれは。人もえとをりかよはす。おものまいりはてゝ。女房みすのもとにいてゐたり。ほかけにきら〳〵と見えわたる中にも。おほしきふのおもとの裳からきぬ。をしほ山のこ松原をぬひたるさまいとおかし。おほしきふは。みちのくのかみのめ。とのゝせんじよ。たいふの命婦は。からきぬはてもふれす。もをしろかねのていして。いとあさやかにおほうみにすりたるこそ。けちえんならぬものからめやすけれ。辨の內侍の裳に。しろかねのすはま。鶴をたてたるしさまめつらし。ぬひものも。松かえの齡をあらそはせたる心はへかと〳〵し。少將のおもとのこれらにはをとりなる。しろかねのはくを人々つきしろふ。少將のおもとゝいふは。しなのゝかみすけみつかいもうと。殿のふる人なり。その夜の御前の有さまの。いと人にみせまほしけれは。よゐの僧のさふらふ御ひやうふをゝしあけて。此世にはかうめてたきこと。またえみ給はしといひ侍しかは。あなかしこ〳〵と。本尊をはをきて。手をゝしすりてそよろこひ侍し。上達部座をたちて。御はしのうへにまいり給ふ。殿をはしめ奉りて。攤うち給ふ紙のあらそひいとまさなし。うたともあり。女房。さか月なとあるおり。いかゝはいふへきなと。くち〳〵思ひこゝろみる。
珍らしき光さしそふさか月は持なからこそちよもめくらめ
四條