Page:Gunshoruiju18.djvu/524

このページは校正済みです

かち人は猶たちよりてくむめり。

 むすふ手ににこる心をすゝきなは浮世の夢やさめかゐの水

とぞおぼゆる。

十八日。みのゝ國せきのふぢ川わたるほどに。まづおもひつゞけける。

 我ことも君につかへんためならて渡らましやはせきの藤川《古今二十 みのゝくにせきのふち川たえすして君につかへん萬代まてに》

ふはの關やのいたびさしは。いまもかはらざりけり。

 ひまおほきふはの關屋はこの程の時雨も月もいかにもる覽

關よりかきくらしつるあめ。時雨に過てふりくらせば。みちもいとあしくて。心より外に。かさぬひのむまやといふ所に暮はてねどとゞまる。

 旅人はみのうちはらふ夕暮の雨にやとかるかさぬひの里

十九日。又こゝを出でゆく。よもすがらふりつる雨に。ひらのとかやいふ程。みちいとわろくて。人かよふべくもあらねば。水田のおもをぞさながらわたりゆく。あくるまゝに。あめはふらずなりぬ。ひるつかた過ゆく道にめにたつ社あり。人にとへば。むすぶの神とぞきこゆるといへば。

 まもれたゝ契結ふの神ならはとけぬ恨にわれまよはさて

すのまたとかやいふ川には。舟をならべて。まさきのつなにやあらん。かけとゞめたるうきはしあり。いとあやうけれどわたる。この川。つゝみのかたはいとふかくて。かたはあさければ。

 かた淵の深き心はありなから人めつゝみにさそせかるらん

 假の世のゆきゝとみるもはかなしや身を浮舟を浮橋にして

とぞおもひつゞけける。又一宮といふやしろをすぐとて。

 一宮名さへなつかしふたつなく三なき法をまもる成へし

廿日。おはりの國おり[つ]といふむまやをゆく。よきぬみちなれば。あつたのみやへまいりて。